サンクコストとは
よくこのような話を聞く。

「5年前にこの変電所のトランスは、省エネのために入れ替えたが、現在7年リースの支払いがまだ残っており、再投資で新たなコストをかけると、残債リース代を回収できなくなるから、たとえ新たなコスト削減を生むためのリース投資であっても、2重投資になるから新たな経費はかけられない。」

  この考え方は経営のプロであれば、間違えであることを一発で見抜くのであるが、なかなか理解するのが難しいらしい。また、大学で経営学のきちんとした学科を勉強した人にも理解に問題がないことなのであるが、経営者の約90%の人はこのことが解らないのが実体である。日本の経営者に限らず、アメリカでも、この問題があり、そのためにかもしれないが専門の訓練を受けたMBA保持者などは、社長になれるスピードが段違いに高いという実状がある。

 経営学では、sunk cost(サンクコスト=沈んだ費用=デッドコスト=過去コスト)、 irrerevant cost(無関係コスト)などと呼ばれている。

 一例として、ある会社がミサイルに使う旧式の部品を500個売れ残ってデッドストックになっているとしよう。簿価上は1,000万円あったとする。この部品を、(a)300万かけて再処理を行い、500万円で販売する、(b)50万円でスクラップ屋さんに販売する。
 という2つのオプションがあった場合、経営判断上、1,000万円は無視できます。このことがスッと抵抗なく解る人は、相当優秀な人。ほんと。何故なら、1,000万円は、a、b案どちらでもサンクコストであるため、経営判断に影響を与えない。

 リース費用の場合も、過去の時点でのサンクコストをリース期間中繰り延べ払いをしているだけ(リースを解約する場合には残債務を一括返済しなければならない)なので、経営判断上、前のリース費用は金額がいかほどであったとしても完全無視できる。
(a案 )現行どおりで変化なし (b案)リース投資
新規経費削減 0円 50,000円
新規リース代− 0円 25,000円
現行リース代 20,000円 20,000円 これは無視できる
現行経費削減 40,000円 40,000円 これは無視できる
経営判断
20,000円
45,000円
差額の25,000円
サンクコストを無視して
も同じ解に到達する。
b案は現状より
25,000円得

 

以下の図はサンクコストを経営判断に入れた場合をあえて図解で示したもの。上の図も下の図も、コストの位置表示が違うだけで、同じものである。追加コストが追加利益を生み出すのに、旧コストは交差するところがないことを幾何学的に見たものであり、上表の算術的な表現に対するものです。