偽装は電力会社にもある良い例です 電力自由化で価格面で痛みを伴っている需要家は、電気料金を一度お調べ下さい。 値上げになっているのなら、交渉して下げてもらう工夫が必要と考えます。

日本経済はデフレ環境からの脱却が徐々にではあるが浸透しつつある。そういった中で産業のコメの一つである電力業界で非常に気になるモラルの後退が起きている。 　それは電気料金の２００６年４月からの値下げ通知分にからんだ動きだ。東京電力のパンフレットによると家庭向けの標準モデルで月額２６３円の電気料金引き下げとある。通常の常識では値下げといった場合には、料金単価の引き下げを一般の消費者は思い浮かべるものと思う。しかしながら、これが全くの虚偽であることがわかる。 　パンフレットを見てみると、確かに新料金が家庭用電気料金で最初の１２０kWhが１５．２９円；旧料金が１６．１円、１２０kWhを越え３００kWhが新２０．０４円；旧２０．９４円、３００kWh以上が新２１．２５円；旧２２．４１円となっており、５％前後の値下げということになる。ところがこの旧料金には燃料費調整額が含まれているのだ。それぞれの３段階バウンドごとの旧料金単価は平成１６年１０月以降、１４．８２円、１９．６６円、２１．１３円であったことから計算すると２％前後の値上げとなっているのである。 　値上げなのに比較対象をかさ上げして値下げと発表するのは企業のコンプライアンスに抵触する問題である。ちなみに、パンフレットに表示されていない工場向けの高圧A料金では旧９．２６円が新１０．２５円で１０％値上げ、大規模工場向けの高圧Ｂ料金で９．７％の値上げ、法人の業務用電力で３％値上げにもなっているというのが実態だ。つまり、いかなる詭弁を用いても値上げを行ったのだ。 　近年、電力会社は電力自由化のかけ声の下、経営の合理化を進めてきた。これは、率直に評価できる。しかしながら、電気料金が複雑になっていることを良いことに、まやかしを行うとはいかがなことか。 　我々、電気料金をお客様に代わって無報酬で選択約款料金のコンサルト活動を事業の一端として扱っているものからいうと、電力会社の秘密主義・情報公開の遅れには耳目を覆う事象が多く発生している。 　たとえば、委任状をお客様から頂いて提出の上のことであっても、契約している電気料金単価はお客様情報だから教えられない、電力自由化で料金単価は個々のお客様で異なるので教えられない、電気供給約款に従来は記載されていた料金種別の料金単価が記載されなくなった、等々の不具合が起きている。本来の電力自由化であれば、料金単価については特に約款上に記載を要し、インターネット上でも公開していくのが原則ではないだろうか。 　こういった虚偽の情報流布と情報隠しは、東京電力だけのやり方ではなく、４月から料金値下げをしましたと報じている関西電力・中部電力でも同様の状況と承知している。IT時代に、最大の電力需要のお客様である産業界の業務用電力・高圧電力に関する料金情報がネット上に欠落しているのは、意図的な情報隠しとも勘ぐられてもおかしくない。 　電力会社の秘密主義は、原発隠し問題以後も改善されておらず、近年問題となってきた産業用の電気料金の基本料金部分を個別のお客様の最大需要電力とする実量制システムを平成１６年までに完遂させた「おごり」が背景にあるのではないだろうか。