政権末期に何を考えるべきか

政権末期に何を考えるべきか

★視界不良(政界ただいま霧の中)
 森首相の退陣が、事実上、確定したそうである。 
相変わらずの永田町の解りにくい力学構造上の動きといえばそれまでだが、なりゆきとは
別に、自民党政治の終焉の時期が刻々と近づいてきているといえる。
 自民党内では、「森首相では参院選を戦えない」という意見が中央、地方ともに広が
り、参院選の決起大会である13日の党大会を前に首相も政権維持は困難と判断したとい
うことである。 
 辞意の表明は、「総裁選の前倒し実施」という間接的な表現で行われたが、このような
時期に、月内にも日米、日露両首脳会談が行われるそうである。一体、外務省の頭の悪い
い連中は何を考えているのだろうか。去りゆく首相が政府専用機を飛ばして首脳会談とい
うことで、対外的には恥さらし、国内的にはこれは一種のモラルハザードだ。こんなこと
に税金を湯水のごとく使い切る人種をゾンビ型官僚組織というが、2001年の政治家た
ちを、歴史に残る愚行と無能化(無脳)集団の支配した年と将来の国民は呼ぶことになる
であろう。
 来年度予算と予算関連法案の成立後の正式の退陣表明、自民党総裁選、内閣総辞職を経
て、4月中旬には新政権発足という流れになるらしいが、加藤、山崎派が再度反旗を翻す
ことがあったとしても、議員内閣制のもとでは、もう一度自民党が組閣をすることにな
る。次の衆議院選挙がいつになるかはわからないが、本年の経済状況の悪化次第で、早い
段階での内閣総辞職、衆議院解散、総選挙という流れは十分あり得る。そういった意味で
参議院とのダブル選挙も国民サイドとしては考えておいた方がよい。
 日本経済はすでに今年の1-2月を転換点に、景気後退期に入っているものと解釈して
いる。その根拠となる経済指標は、鉱工業生産を始め、卸売物価、有効求人倍率と失業率
のギャップ拡大等々、デフレ化が進み、日本経済は深刻な状況にある。こういったときに
よく、「危機を克服し、経済を活性化させるために、あらゆる政策手段を速やかに講じな
ければならない」などという呪文のような文句がよくでてくるが、ことは左にあらず。経
済は目先のことよりも、構造改革の1歩を着実に踏み出すことが大切なのであって、元き
た道を戻ることではない。1月からの省庁再編での「改革」は橋本内閣時代の汚点が現実
化したようなもので、何らの改革にはなってはいない。4月以降の情報公開法の施行くら
いが成果といえば成果である。 
 株価対策や、土地流動化策などをはじめとした経済対策は、目先の政策としてはよい
が、今求められている政策はもっと根本の問題である。小渕、森と2代にわたり財務大臣
をしている平成の高橋是清こと宮沢喜一は、この間何をしていたのだろうか。官僚出身の
評論家お公家集団の長を大蔵財務の官僚たちはいいように利用したということか。
  憲法改正問題、土地そのものの私有制限をも含めた、公有制の議論、官庁組織人員の削
減、部署の廃止、規制緩和、公益法人の原則廃止など大きいところの検討ないし実施を早
急に着手することを避けて、何らの将来があろうか。
 土地を巡る民間ビジネスに関していえば、川上の論理で今まではやってきたが、今年あ
たりは景気後退から分岐点になるものと思われる。
 事業者が消費者をあおって売りつけ続けている劣悪環境の狭小なウサギ小屋を売らな
い、買わない、土地を買わない、といった見識がでてくることになろう。土地を公有化す
れば、土地の値上がりによる不当所得の移転が防げ、その分、スペースの拡大と住環境ア
メニティーの改善とで住宅マーケットは拡大する。1家に2台の使い分けのできる車も可
能となり、より人間らしい環境に近づくことができる。20年30年、汗水たらして稼い
だ大切なお金だ。たとえ夢の自宅建設が目的としても、人はいずれは死ぬ。狭く猛烈に高
い土地に大金を費やす愚を都市生活者は選択しない見識が必要である。それだけのエネル
ギーがあれば、首相公選制に参加するとか、役所にインターネットで細かい苦情、注文を
付けるとか、何か自分の歴史に残ることができる筈だ。あなた一人の選択は、万の力に束
ねられたときにこの世界の政治経済を根本的に変化させることができるのだ。

★エリートの権威は地に落ちた
  新年明けからローキーなニュース、不景気風が吹き続けている。例年であると3月上旬
ともなれば、明るいニュースがでてくるのだが今年は違う。
最近は、何ごとにつけあきれ果てるというか、常識外の事件が多発するので、変化に対す
る免疫ができてきた。免疫もいい方向でできてくれればよいが、国民総体としては諦めと
か、無関心という形で今までの動きは発露してこなかったのではないだろうか。
 今年に入っての外交機密費を巡る問題は、政府は『被害者』ではすまない問題を含んで
いる。 
 3月10日、ようやく機密費流用事件で外務省の元要人外国訪問支援室長、松尾克俊容
疑者(東京都文京区小石川5丁目)が、警視庁に逮捕された。機密費を巡る様々な疑惑が
どこまで解明されるのであろうか。 
  1月に事件が明らかになって以来、逮捕にこぎ着けるまでに2ヶ月以上費やしているこ
とになるが、外務省というところがいかに秘密のベールに包まれたものであるか、また、
組織全体の関与を十分に推測させる結果となった。
 外務省の告発は業務上横領容疑だったが、逮捕の容疑は詐欺になった。ここに2ヶ月間
の空白の間の答えの一つがある。首相の外国訪問に伴う随員の旅費を水増し請求し、首相
官邸から多額の機密費をだまし取るというのは、公金横領罪であって、詐欺というと被害
者は国家であって、悪いのは松尾克俊容疑者のみという構図が見えてくる。
 新聞にも報ぜられているし、また国会審議中継でも確認されていることだが、局長クラ
スで年間600万円の飲み食い自由、朝食に5千円、和食に35千円、随行時に一人30
万円の餞別、といったことは周知の事実である。まさに何を考えておるのかと言いたい、
目を覆うばかりの惨状が現在の政治行政を取り巻いている。
 この問題の本質は、組織ぐるみであるということと、エリート層に巣くう金まみれ、金
満国家主義、拝金主義の汚染ということであり、このところを真摯に反省しない限り、も
のごとの解決にはつながらない。外交機密費約五十五億円のうち、毎年18億円が官邸に
「上納」されているとされる。現官房副長官の筆跡による外交、官房機密費について説明
した書類も存在する。その書面には、「上納システム」のことが書かれている。しかる
に、政府は上納を認めると財政法違反となるので、今回の逮捕(詐欺罪での)で、上納自
体を全否定するという筋書きを作った。一般の人は、ああ、ようやく逮捕されたか、後は
警察が洗いざらい徹底的に調べるだろう、程度の考えであろうが。これで、一件落着なの
である。時の政権は、警察権については当然のことながら掌握している。実際に想像され
ること以上のことがあっても、外交機密費が持っている秘匿性を盾に黒を白でごまかそう
としているのだ。灰色の部分を、白とする仕上げの課程が今回の逮捕ということなのであ
る。逮捕の後、あとの身の振り方からすべては打ち合わせ済みの筈だ。そうでなければ、
事件発覚告発から2ヶ月もかかるわけがない。国家の暗い部分を今回は見せられたという
ことだ。国民はじっと見守っている。

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