新年度の景気と今後の10年

新年度の景気と今後の10年

★2001年2月以来、日本経済は景気後退期に突入した
  失われた10年といわれる昨今の経済であるが、ついに2001年3月期末は株価1
3,000円割れで終わった。株価水準は2年半前の水準に逆戻りだ。一方、バブルの崩
壊後約10年にわたって経済を牽引してきたハイテク株の動向をみると、2000年の夏
を境に下降に転じている。そして今なお、その傾向が続いている。 
2000年8月以来2001年3月までの諸指標を簡単に整理すると、
  卸売物価は:継続的安定的に下降トレンドにある  ↓
  鉱工業生産指数は:継続的安定的に下降トレンドにある ↓
  在庫指数は:継続的安定的に上位水準にある ↑
  失業率は:高位安定の5%に近い高水準にある
 有効求人倍率は:0.6という低水準である
というわけで、4月に入ってからの倒産件数は、文字通り急増をしている(3月の負債額
50億円以上の企業倒産は29件であったが、4月はすでに6日現在11件を数えてい
る。備考を参照)
  日経平均株価はどうかというと、2000年4月14日の20,434円から2001
年3月16日の12,232円までほぼ一直線に下がり続けた。4月6日現在13,38
3円の若干の持ち直し状況にはある。企業の決算数値の基になる3月末の株価は日経平均
でかろうじて約13,000円で取引を終えている。
 このような状況の中で、超低金利で行き場を失ったマネーが、株式取引市場に流れ込ん
できており、この不景気に連日10億株代の取引が続いている。だが、マーケット心理は
きわめて懐疑的であり、この1年間で損をした一般投資家が今後とも証券市場に戻ってく
るのかは何ともいえない状況にあるように思える。ただ、週明けにも、緊急経済対策とい
うことになっているので、ここで、配当への2重課税の問題撤廃とか、そもそもキャピタ
ルゲインへの課税廃止とか、「抜本的なもの」が一つでもでてこないと、市場は反応しな
いのではないか。
 短期的に見て株価の動向を左右するのは、ハイテク株ということになろうが、この種類
の企業群が力強い牽引力を発揮するかというと、現状の在庫水準からもいってかなり無理
なことだ。
 ハイテク株が長期的にどのようなサイクルで推移してきたかというと、よく言われるこ
とだが、1960年代から見て3つの大きな波動があった。
 最初は1960年台後半から70年のいわゆる3C(車、カラーTV、クーラー)ブー
ムであり、国民に多くの満足感をもたらした。それが1980年代になると小粒化した軽
薄短小という言葉を生み出した家電VTR、CDラジカセ等のブーム。そして今回が19
90年に始まったPC、ITブームだ。このPC、ITブームは確実に一つの踊り場的ス
テージにある。
 80,90年代にはに土地投機を伴った住宅マンションブームというのがあったが、こ
れは本物のブームではない。現状では依然、住宅土地に対する需要は高いものの、土地政
策の失敗とバブル政策(1985年以来の円高誘導策による)の失敗から本質的な手を打
てていないからである。次の自民党政権に取って代われる政権があるとすれば、3Cブー
ムに火をつけるのと同様なプロセスと効果があるものとして、土地住宅の問題がある。こ
こに目をそらしたままで、景気浮揚を図ることなどできない。だが、間違っても、この政
策の推進の中で、地価の下落こそ容認すれども、地価の安定という名目でミニバブルブー
ムなどを招来することがあってはならない。
 いずれにせよ、安定政権、もしくは国民による政権交代劇があり、明確な道筋がつけら
れない限り、今回の景気後退期間は循環論的に考えても2,3年は最低でも続くのではな
いか。国民の意識改革を求められている時代でもある。興味のある方は  
http://www.shushokosen.org/ をのぞいてみるのもよい。首相公選の会としてはきわめ
てまともな組織だ。筆者自身も3月29日の3,000人実行委員会に出席して確認をし
たことであるが、この会は政党的なものではなく、ボランティア組織と考えて、ほぼ間違
いがない。

★商いに義の求められる時代に
  1990年代が失われた10年であるなら、過去の商慣習、商売の仕組みを変えるとい
う意味で「過去を失う10年」にすることができれば、日本経済の再生は可能だ。そのた
めの第一歩が不良債権の処理という金銭面の措置ということになるのはよく解る。だが不
良債権が120兆円とか68兆円とかいとも簡単に、金銭的に表現されてしまうとお金の
処理の問題だけに聞こえるが、それだけに終わったのでは何の意味もない。問題は、銀行
ということでいえばその処理の後に、どういう金融機関となっているのかを明確に示し行
動する義務があるということだ。ペイオフにしても1年延期で来年4月実施であるが、そ
ういうことをよく理解させるプログラムをしっかり作ることと、預金者側は自己責任とい
うことをよく理解することが大切である。たぶん、ペイオフになると定期「預金」とかを
する人はだいぶ減って、株式、債権の購入といった面にお金がシフトを始めるようになる
のではないかと思う。そのようなときに、郵便貯金が残っていたとすると、株式、債権を
嫌う人がかなりのウェートで郵便局にお金をシフトするかもしれない。そうだとすれば、
郵政事業民営化論というのがあるが、絶対に民営化しないとおかしな金融システムという
ことになってしまう。郵便貯金は国債同様、ペイオフ対象とはなり得ないからだ。そうい
った意味で、来年もまたペイオフ延期などということも十分、可能性としてあり得る。
 ことほど左様に商いに義を求められるというのは、そういう意味できわめて大切なこと
である。これは、いろいろな意味を持っている。
 例を挙げればきりがないが、1個1万円とか5千円のDocomoの携帯電話用電池な
どというのは、「ボッタクリ的」義なしの商売だ。
 不動産会社がバブルの時と同じで、往復6%の手数料を取っているというの、義なしの
商売だ。国会議員が10年間に9人も10もの首相を粗製乱造しているのは、義なしの政
治家だ。いずれ国民投票で、首相を選ぶようになる。
 大企業が、60歳定年で退職金を用意するのは、義なしの企業だ。国内企業の93%は
中小企業で退職金規程などもっていない。退職金を配るなら、その分、雇用を創造せよ、
定年を延長せよ。人類の飽くなき科学信奉の行き着く先は、荒唐無稽と笑わずに聞いてほ
しい。人生90歳現役労働が平均化、という時代が否が応でも迫ってきている。簡単に理
由をいえば、2つある。一つは国民負担の問題だ、今の国民年金制度は根本的な欠陥商品
である。20年もたたずに、若者は国民年金の掛け金を払う能力がなくなってくるから
だ。65歳以上の「老人」が増えしかも働かないのだから、若者への負担は急増する一方
である。次に大きな問題は、人類がヒトゲノム遺伝子解読分野で想像を超えるスピードで
開発、特許競争を始めているということがある。ヒトの臓器は、遺伝子レベルで再生が可
能なところまであと数年もせずに行き着くかもしれないということである。

備考:倒産状況(4/6まで)
2001/04/06 株式会社伊豆興産 (リゾートホテル経営  静岡県賀茂郡)銀行取引停止、事
後処理を弁護士に一任
2001/04/05 株式会社パシフイック・テレコム (電話通信事業  東京都渋谷区)民事再生
手続き開始を申請
2001/04/05 株式会社サンマロ (手形割引業  山口県徳山市)自己破産申請準備中
2001/04/04 株式会社京樽商事 (運送取次ぎ、不動産仲介 京樽関連 東京都中央区)特別
清算開始決定受ける
2001/04/04 ユナイテッドファイナンス株式会社 (不動産担保融資  東京都港区)特別清
算開始決定受ける
2001/04/03 株式会社ヨナシロ (家具小売  沖縄県中頭郡)民事再生手続き開始を申請
2001/04/03 株式会社ザ・フオレストカントリークラブ (ゴルフ場「ザ・フォレストカン
トリークラブ」を経営  静岡県周智郡)民事再生手続き開始を申請
2001/04/03 ヤマ清瓦工業株式会社 (化粧瓦製造、ゲームセンターほか経営  愛知県碧南
市)民事再生手続き開始を申請
2001/04/02 株式会社イトー (建築工事業者  静岡県裾野市)民事再生手続き開始を申請
2001/04/02 株式会社エス・エヌ・ケイ (「NEO-GEO」(ネオジオ)などのゲーム機
器の開発・製造  東京都江東区)民事再生手続き開始を申請
2001/04/02 鍋順瓦工業株式会社 (老舗の陶器瓦製造、卸  愛知県高浜市)事業停止、自
己破産申請へ
3月分:
2001/03/30 つくば都市開発株式会社 (不動産業  東京都新宿区)破産宣告受ける
2001/03/30 株式会社多摩ニュータウン開発センター (商業ビル賃貸・管理 東京都が出
資する第3セクター 東京都八王子市)民事再生手続き開始を申し立てられる
2001/03/30 笠原金属産業株式会社ほか1社 (非鉄金属アルミ地金販売  東京都中央区)
破産宣告受ける
2001/03/29 株式会社下田温泉ホテル (温泉旅館経営  静岡県下田市)民事再生手続き開
始を申請
2001/03/28 盛喜株式会社 (呉服・寝具・衣料品卸  青森県青森市)自己破産申請に向け
準備中
2001/03/27 株式会社岩本 (老舗の酒類卸  東京都新宿区)事業停止、事後処理を弁護士
に一任
2001/03/26 朝日実業株式会社 (不動産賃貸、貸金、各種物販 朝日生命の関連会社 東京
都中央区)特別清算開始決定を受ける
2001/03/26 東海商船株式会社 (外航海運  東京都千代田区)民事再生手続き開始を申請
2001/03/23 東京生命保険相互会社 (中堅の生命保険会社 更生特例法適用申請は3社目 
東京都千代田区)更生特例法の適用を申請
2001/03/23 株式会社冨士工 (東証1部上場の中堅ゼネコン  東京都港区)民事再生手続
き開始を申請
2001/03/22 株式会社東相銀ファイナンス (住宅ローン保証 東京相和銀行関連 東京都足
立区)民事再生手続き開始を申請
2001/03/22 オ-ドマン株式会社 (衣料品製造  香川県観音寺市)自己破産を申請
2001/03/21 有限会社武本 (パチンコ店・ホテル経営、不動産賃貸  東京都江戸川区)破
産宣告受ける
2001/03/21 笠原金属産業株式会社ほか1社 (非鉄金属アルミ地金販売  東京都中央区)
自己破産を申請
2001/03/19 株式会社ベタ-ライフ (ホームセンター経営 大証2部上場 大阪府堺市)民
事再生手続き開始を申請
2001/03/16 味のふるさと協業組合 (酒類・調味料製造  山梨県東八代郡)自己破産申請
2001/03/16 瀧原産業株式会社ほか1社 (合成樹脂繊維販売  東京都千代田区)自己破産
を申請
2001/03/16 株式会社安岡織物 (パチンコ店経営、不動産賃貸  京都府京都市上京区)民
事再生手続き開始を申請
001/03/15 日特不動産株式会社 (不動産業 東証1部上場・日特建設の子会社 東京都中
央区)特別清算開始決定受ける
2001/03/15 株式会社エヴァンタイユ (ゴルフ場運営  栃木県栃木市)民事再生手続き開
始を申請
2001/03/14 グリーンハイツ株式会社 (宅地分譲  大分県別府市)2回目不渡り
2001/03/13 興和物産株式会社 (宅地分譲、貸ビル業  東京都新宿区)商法に基づく会社
整理を断念、破産宣告受ける
2001/03/12 旭洋株式会社 (リゾート、不動産管理 フェニックスリゾートの設立母体 大
阪府大阪市中央区)特別清算を申請
2001/03/12 株式会社イージーキャピタルアンドコンサルタンツ (ノンバンク、不動産
業 大阪府大阪市北区)破産宣告受ける
2001/03/12 株式会社ベターライフ (ホームセンター経営 大証2部上場 大阪府堺市)1
回目不渡り
2001/03/09 三重定期貨物自動車株式会社 (一般貨物自動車運送  三重県伊勢市)銀行取
引停止
2001/03/07 株式会社有田ヴィ・オー・シー (陶磁器テーマパーク「有田ポーセリンパー
ク」の元運営会社 青木建設の関連会社 佐賀県西松浦郡)特別清算開始決定受ける
2001/03/05 フットワークエクスプレス株式会社ほか2社 (貨物運送、名産品販売  大阪
府大阪市中央区)民事再生手続き開始を申請
2001/03/05 アキヤマ印刷機製造株式会社 (印刷機械製造  東京都葛飾区)和議による再
建を断念し、民事再生手続き開始を申請
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