新電力、新規契約停止相次ぐ 燃料高で電力調達費かさむ

新電力、新規契約停止相次ぐ 燃料高で電力調達費かさむ

700社超乱立、淘汰加速へ 日本経済新聞

電力の卸価格が高騰している

ガスなどの燃料高が電力の取引価格を押し上げ、自前の発電設備が乏しい新電力の経営をむしばんでいる。卸電力市場からの調達価格が顧客への販売価格を上回る「逆ざや」状態に陥る事業者が続出。電力プランの新規契約を停止する動きが相次ぐ。経営環境が悪化する中、700社超が乱立する新電力の淘汰が加速しそうだ。

2017年2月設立の新電力、グリーンピープルズパワー(GPP、東京・新宿)は22年1月、法人向けの高圧電力プランの新規受け付けを止めた。竹村英明社長は「顧客の増加は経営上のリスク。新たに受け入れられる状況にないため営業活動も控えている」と話す。

GPPはグループ会社が発電設備を保有しているものの、販売電力量の約4割を日本卸電力取引所(JEPX)で調達している。欧州ガス危機の影響で21年9月ごろから液化天然ガス(LNG)のスポット(随時契約)価格が上昇し、JEPXの取引価格も10月ごろから上がり始めた。

24時間平均の取引価格は1キロワット時当たり10~30円程度で推移しており、21年11月の平均価格は約18.5円と前年同月比3.3倍となった。GPPの電力調達コストはこの時点で想定の2倍に達した。「電気を売れば売るほど損失が膨らむ。このまま何もしないと会社が危ない」と竹村社長は頭を抱える。

21年12月期決算は最終損益が3200万円の赤字になった。複数の発電事業者と電力購入に関する相対契約を結び、取引所に調達を依存する状態から脱することで事態打開につなげようとしている。

自治体向け電力供給を担うホープは21年7月ごろから新規顧客の受け付けを停止した。自治体では電力調達を一般競争入札で決めているケースが多いが、入札への参加自体を控えた。

自治体との契約期間は通常1年間に設定されているため、順次満了を迎えている。販売電力量は21年7月に3億6000万キロワット時だったが、22年1月には3億1000万キロワット時に減少した。

ホープは自社の発電設備を持たず、販売電力量の大半をJEPXで購入している。1月にはJEPXから1キロワット時当たり平均26.8円で電力を調達し、顧客に同14.9円で供給するなど原価割れが常態化している。担当者は「赤字続きだが、既存顧客との契約まで打ち切るわけにはいかない」と嘆く。

LNGの在庫不足などで20年12月から21年1月にかけてJEPXの取引価格が高騰した際、ホープは約80億円の損失が発生し、21年6月期の連結決算では最終損益が69億円の赤字となった。21年6月末時点で24億円の債務超過に陥っており、同年12月末には80億円まで拡大した。

このほか、環境関連事業などを手掛けるボーダレス・ジャパン(東京・新宿)は22年1月に「ハチドリ電力」のオール電化プランの新規加入を停止した。害虫駆除のサニックスも21年12月から一般家庭向けプランの受け付けを止めている。

電気・ガス料金の比較サイトを運営するENECHANGE(エネチェンジ)によると、顧客数の拡大を抑えるため、広告出稿やキャンペーンを控える新電力が増えている。「引っ越しシーズンは新電力にとって書き入れ時のはずだが、今年は新規顧客獲得に向けた動きが鈍い」(同社)

新電力は21年ごろから経営破綻が増えている。20年12月から21年1月にかけてJEPXの取引価格が高騰したあおりで、新電力大手のF-Power(エフパワー、東京・港)が21年3月に破綻。新電力のパネイル(東京・中央)やアンフィニ(大阪市)、フェニックスエナジー(東京・中央)なども相次ぎ倒産した。

大手新電力の幹部は「卸電力市場のボラティリティー(変動率)が高まる中、電力小売事業は『ハイリスク・ローリターン』になっている」と指摘する。十分な採算が見込めないと見切りをつけ、新電力のハルエネ(東京・豊島)やリケン工業(神戸市)、スマートテック(水戸市)が高圧電力販売から撤退した。

16年4月に電力小売りの全面自由化が始まって以降、異業種などから参入した新電力は700社を超える。自前の発電設備を持たない多くの事業者にとって、卸電力市場の価格高騰は死活問題となる。天然ガスなどの燃料高は長期化の様相を呈しており、しばらくは厳しい経営環境が続きそうだ。

(清水涼平

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