未稼働の太陽光にメス

未稼働の太陽光にメス 日本経済新聞 朝刊
(経産省、電力買い取り減額検討 割高既得権の業者に照準 2018/10/5付   

経済産業省は太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の見直しを加速させる。2012年に制度を始めたばかりの頃に認定を受けたまま発電を始めていない案件について、買い取り価格を減額する方向で検討する。価格が高い未稼働案件が稼働し始めれば、企業や家庭の負担は増えるため対策を急ぐ。事業者の反発も予想され、調整は難航する可能性がある。

太陽光の普及を急ぐため、買い取り価格を先行する海外よりも高く設定していた(熊本県内の太陽光パネル)

太陽光の普及を急ぐため、買い取り価格を先行する海外よりも高く設定していた(熊本県内の太陽光パネル)

FITは11年の東日本大震災や原子力発電所の事故を受けて12年から始まった。経産省が個人や企業を再生可能エネルギーの「発電事業者」と認定し、つくった電力を長期間、固定価格で買い取ることを電力会社に義務付ける。電力会社は買い取り費用を電気料金に上乗せする。原発や火力などに依存した電源構成を見直し、再生エネを普及させる狙いがあった。

太陽光でつくった電力の買い取り価格はFITを始めた当初の12~14年度に、事業用で1キロワット時あたり32~40円だった。現在の18円を大きく上回る。海外よりも高く設定し、普及を促した。

高値の時に認定を受けておけば、発電開始が何年後でも認定時の条件で高く売電できる。制度の発足当初は発電パネルの価格も高かった。増産効果で安くなった海外産の登場を待って発電を始めれば、事業者は利益を増やせる。

実際、こうした制度の穴をついた事業者は多い。特に買い取り価格が高値だった12~14年度の3年間に認定された案件で、未稼働分は約2400万キロワットにのぼる。同期間に認定された全容量の4割強を占めている。

経産省が8月に開いた会議では、未稼働分の太陽光がすべて発電を始めた場合、電力会社の買い取り額は1.3兆円も膨らむとの推計が出された。再生エネの買い取り価格を電気料金に転嫁した額は18年度に2.4兆円。さらに膨らみ続けると、個人の負担増に加え、企業の産業競争力も損なうと懸念される。太陽光の買い取り額ばかりが膨らむと他の再生エネの普及も阻みかねない。

こんな状況を是正するため、経産省は未稼働の太陽光対策を加速させることにした。過去の未稼働案件について買い取り価格を認定時より減額することが軸になる。事業者の権利を取り消す厳しい措置を検討すべきだとの声もある。10月中に審議会を開いて、具体的な議論を始める。

これまでも17年施行の改正FIT法で、未稼働案件のうち電力会社との契約がないものを失効させる措置を始めた。それでも電力会社と売電契約を結びながら稼働していない案件は多く、規制を強める必要があると判断した。

経産省幹部によれば、買い取り価格が高値の時に再生エネ事業の権利を手にし、そのまま寝かせておいた業者は外国資本に多いという。第三者に権利を転売する業者もあり、未稼働の多くはこうした「空おさえ」と呼ばれる案件。規制強化の主な対象として想定される。一方、地元自治体や近隣との調整など、太陽光発電を稼働させる意志はあるのに動かせない例も一部にあるとみられる。

そもそもFIT制度に穴を残したのは政府の責任ともいえ、正当な理由もなく権利を取り上げられれば、訴訟が頻発しかねない。未稼働案件の中で、買い取りを減額する対象をどう線引きするのか課題は残る。

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