(第1話)--世紀を超えた日本の選択方向
2000年7月23日沖縄サミットも終了し、お祭りは終わった。森首相はしんみりと
した表情で記者団の質問をこなしていたが、沖縄基地縮小問題は議題にすら乗らなかっ
た。戦前、帝国主義の亡霊に囚われたエリート達がとった皇民主義は、結果として、戦
後、沖縄に米軍基地という施設をもたらすことになった。この施設は半世紀を超えてな
お、存続し続けることになるが、人類が局地的紛争に対する恐怖心をもつ限り、また、日
本のリーダーがよほどのリーダーシップを発揮しない限り、将来ともこの状況は変わるこ
とはない。
毎年1兆円を超える思いやり予算を米軍に対して払い続けるニッポン。これは1970
年代の三木内閣の時から始まった制度的なものであるが、その後30年を経て世界情勢が
変わり、日本経済が右肩下がりの時代になり、中高年労働者が悲鳴を上げている時代に、
何とも形容しがたい愚かしさを感ずる。
全ては、戦前に遡る「選択」の誤りと、国民性からくるものと簡単に片づけるわけには
いけないが、そろそろ覚醒の時期ではないであろうか?
信頼できる筋のデータによると2000年末の世界人口推定値は、61億2200万人
と推計予想されている。およそ1秒間に3人近い人口が世界で増えている計算スピードで
ある。紀元1世紀の地球人口は約1億人、これが18世紀はじめにやっと10億人程度だ
った世界の人口は、1950年には25億人、1987年には50億人を突破した。わずか2世紀
足らずの間に倍々に増加。その後も年に約9千万人ずつ増え続け、1997年現在59億人と
なっている。
地球が養える人の数は、耕作面積、収穫量、必要摂取カロリーなどのデータから計算し
ていくと、75億人前後だと言われている。世界銀行によれば、世界の人口は2025年に8
5億人、2150年には114億人になると言われているので、地球が滅亡するのは時間の問
題である。
世界人口の増加の9割が途上国で起きているために生ずるいわゆる南北問題は、我々
「近代社会」に住む者たちに緊急の選択の課題を突きつけているものといえる。
当然、コソボ、東ティモール、アフリカ、中東区域など途上国の各地では、紛争が絶え
ず、経済支援、軍事的後方支援などにおいて、ニッポンが果たさなければならない役割を
日本人ならば理解すべきことである。それが、地球生き残りをかけた最後の戦いであり、
経済大国ニッポンならば当然のことといえる。
しかし日本の現状はどうであろうか?日常耳にする目にする事件で、その質の悪さは群
を抜いてきている。保険金目当ての尊属殺人、親族殺人、金ほしさの少年による少年殺人
など、例を挙げればきりはない。
このような時代背景は、大人、子供の国民一人一人が、極論すれば、生きるだけの目
標、生活を浪費するだけの楽しみを知っていることからきている。これは、自然が(神
が)与えてくれた環境と制約の中で、人間として、命を終えるまでに何をなさねばならな
いか、ということにあまりにも無関心でありすぎることがまねいてきた負の遺産の蓄積で
ある。したがって、はき違えた経済合理性の奴隷になってしまっているからだと言えるの
ではないであろうか。このような理屈めいたことは、生活が豊かでなかった戦後の一時期
には、言わずもがな、皆が解っていたことであり、あらためて説く必要性がなかった。急
速に老人大国化するニッポン。途上国への役割を果たしながら、国内経済の健全性を確保
していくためには、国民の意識レベルでの改革が必要となる。この改革のために、成さね
ばならないことは沢山ある。
その選択肢に入る前に、国民一人あたりの総エネルギー消費からみて、日本はどのレベ
ルにあるかということを考えてみたい。下表にみるように、アメリカを除けば日本の一人
あたりエネルギー消費は、既に先進国のレベルに達している。これ以上のエネルギーを消
費せずに、社会の仕組み、生活の質の改善を求めていくことが大切であることを示してい
るものと思う。
(1996年)(単位:石油換算万トン) 一人あたり
1位 アメリカ 213030 2億6303万人 8トン
2位 中国 87400 12億3251万人 0.7トン
3位 ロシア 60540 1億4786万人 4トン
4位 日本 50180 1億2557万人 4トン
5位 ドイツ 34500 8207万人 4トン
6位 インド 24670 9億3574万人 0.3トン
7位 フランス 24340 5663万人 4トン
8位 イギリス 23010 5635万人 4トン
9位 カナダ 22310 2884万人 7.7トン
10位 韓国 16470 4460万人 3.7トン
現在、日本が直面している問題の一つは、日本の人口の少子化、労働需給のミスマッチ
であるが、これを解決していく方策は断じて、IT産業の育成などというものではない。
安定的な経済成長とは、手段や、虚業の育成などではなく、もっと壮大な計画に基づくも
のである。IT憲章の採択などは手段に過ぎず、本質的目標は別のところにある。この目
標について、順次展開してみたい。次回は、土地住宅問題、車社会、銀行問題、行政問題
など、身近な話題を中心に続けてみたい。
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