電力自由化が行き詰まっている

電力自由化が行き詰まっている。契約中の電力会社が電力供給を停止する場合、需要家は新たな電力会社へ契約を切り替える必要がある。新しい契約先が決まらない場合には、一般送配電事業者(10電力会社)の「最終保障供給」を受けることになる。これは、体の良いペナルティー値上げと言うことだろう。

最終保障供給とは、需要家がどの電力会社とも契約のない無契約の状態になっても、電力の供給が停止しないようにする仕組みだ。電力契約のセーフティネットと位置付けられており、大手電力会社の標準料金メニューより2割高い料金に設定されている。

このため、体力の弱い配電業者に拘わらず、大手の新電力会社の中からも撤退もしくは契約解除が相次いでいる。中小企業で変電所を持っているところでは、新電力の電気購入先から撤退通告を受け、泰然自若とはいかず慌てふためく。新電力の撤退が続くと、最終的に数社に自然淘汰はされるだろう。従前の10電力会社の勢力復活とオリガルヒ的な新電力が生き残るのか。2割高い最終保証供給の適用には、時限的な措置を講ずるなどの行政対応は必須であり、経済産業省は早急に対応しなければならないのはもちろんだが、新自由主義の基に経済産業省主導で始めた制度も、早くも制度疲労ということか。

新電力の中には、この機とばかりに保工分離(電気保安管理業と電気工事業の利益相反を避ける考え方)ならぬ保商分離(電気保安管理業と電気販売業の利益相反を避ける考え方)を形骸化する動きが顕在化している。通常は電気を販売し料金を請求する会社と電気保安を担う法人もしくは管理技術者は兼任することがなく、利益相反が起きないように制度化されている。しかし、新電力の淘汰の過程で、その中には電力を販売し、かつ、電気保安を担う者が実質的に同一で、請求も同一のため、その料金請求システムの不明瞭化、歪んだモノポリーを生むオリガルヒ化を生む。このことは、技術者の技能、サービス内容の低下と言った副次的影響もでてくるだろうし、新たな保安管理市場における独立開業市場の開拓を困難な方向に向かわせている。電力自由化では新しい資本主義経済に於ける競争を通じ、より安く安定的な電力を提供する目的があったはずだが、手段と原則を放任したままでの新電力新エネルギー推進の咎が明確になってきたのではないか。

700社もあるという新電力会社だが、自前の発電所を持たない会社についての何らかの制限措置も必要であろうし(最低発電率の設定)、撤退をしていない会社による代替先を定めない安易な契約解除(赤字が大きい顧客先に)の動きを規制し、責任意識を持たせるなど打つ手はいくらでもあるはずだ。

相次ぐ新電力の倒産。撤退含むとその数は31社に(帝国データバンク、「『新電力会社』倒産動向調査」より)

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