リース取引、資産計上へ 会計を国際基準に

2019/3/8付情報元日本経済新聞 朝刊

機械や設備を購入せずに借りて利用する「リース取引」に関する会計基準が変わる。今までは企業の財務状態を表す貸借対照表(バランスシート)に記載する必要はなかったが、ルールが変わればリースの金額を明記する必要が生じる。上場企業全体を表す「日本株式会社」の資産は17兆円増える計算。リース離れの懸念に加え、資産効率を表す指標は数値上悪化するが、国際標準並みに財務の透明性を高める。

日本の会計基準を作る企業会計基準委員会(ASBJ)が8日に開く会合で見直し議論に着手、月内の合意を目指す。慎重論も残り、実際の導入までは草案作りや意見募集などで2~3年かかる可能性がある。

国際会計基準(IFRS)は2019年1月、米国会計基準は18年12月から始まる会計年度でこれまで簿外だったリース資産も全て計上するルールを導入済み。会計基準の国際化(総合2面きょうのことば)上、日本基準の遅れが課題だった。

リースは2種類に大別される。購入に近い「ファイナンスリース」と、賃貸借である「オペレーティングリース(オペリース)」だ。事務機やパソコンなどに多いファイナンスリースは既にバランスシートに計上していたが、今回対象になるオペリースが残っていた。船舶や飛行機、倉庫など耐用年数の長いものが多い。

影響は不動産や小売業、物流、海運など多方面に及ぶ。海運では船舶、空運では航空機材でリースを多く活用する。物流の倉庫もリース物件が多い。賃貸物件をオーナーから借り上げ、賃料保証するビジネスモデルのレオパレス21や大東建託では新たに多額の資産と負債の計上が必要になる。

あくまで会計処理上の問題だが、経営目標として総資産利益率(ROA)などを掲げる企業の数値悪化が投資家の判断に影響する可能性はある。財務基盤の弱い会社にとって有利子負債額の増加は重荷だ。

現行の日本基準で支払いリース料は損益計算書上の費用だが、バランスシートには記載せず有価証券報告書に注記の形で載せている。日本経済新聞社が約1250社の注記を集計した結果、合計額は約17兆円に達した。既に計上が決まったIFRSや米国基準を使う企業分も含めると計25兆円弱。日本の上場企業の資産が2%膨らむ規模だ。

リース業界への影響も大きい。代金を経費に計上するだけの簡便な会計処理は手軽なリースのメリットの一つだった。購入に比べ初期費用を抑えられるメリットは変わらないが、資産計上して毎年減価償却の処理をする手間が生じる。「オフバランスという利点が薄まれば、リース設備を利用して企業が投資する意欲が弱まる」との声もくすぶる。

税務上、損金算入できる利点については「特に大きく変わらないのではないか」(大手監査法人)との見方が多いが決まっておらず、将来税務上の取り扱いを巡り議論になる可能性もある。

ASBJも産業界の声に鑑み、リース会計の見直しに慎重姿勢をとってきた。だが、IFRSや米国基準が次々新ルールを導入する中、これ以上遅れれば投資家から日本の財務諸表の信頼性を疑う声が出かねないとの懸念が出ていた。

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