行革に対する国民的理解のために(その3)

行革に対する国民的理解のために(その3)

国民年金のあやしい話
2000年8月25日、新聞各紙に国民年金に関連する報道が取り上げられた。すなわ
ち、厚生省は来年度の税制改正要望で、自営業者や学生など国民年金を納める1号被保険
者の未納・未加入者を対象に、年金型生命保険加入の際の税控除(最高年額10万円)を
受けられなくするペナルティーを科すことを盛り込んだということである。
結論からいうと、社会保険庁は無責任の極み、年金事業を無原則の収益事業運営に持っ
ていこうというのであれば、こういうプランに関わった職員全員を首にした方がよろしい
かと思う。また、新聞各紙の掘り下げは気迫不足。
98年の厚生省の調査によると、現在、国民年金に加入する学生や自営業者らは、約2
043万人。未加入者が99万人、未納者が172万人と数字でいわれる限りでは、国保
財政が深刻化している。このうち年金型生命保険加入者は、未加入者のうち17万人、未
納者のうち35万人が生命保険会社の個人年金に加入しており、未加入者と未納者の1
9%程度である。
未納・未加入者対策に厚生、労働両省が打ち出した苦肉の策で、大蔵省がこれを認める
かどうかは大いに議論と見識を要するところである。
厚生、労働両省は、国民年金の未加入・未納者を、この個人年金保険料控除の対象外と
することで、「公的年金制度の空洞化」を防ぎたいとしている。
イレギュラーな増税につながるケースのため、生命保険協会は同日、「懲罰的観点か
ら、個人年金保険料控除の見直しを行うことには強く反対する」とのコメントを発表し
た。生命保険会社の個人年金に加入している場合、通常の生命保険料控除とは別に、個人
年金保険料控除として所得税で5万円、住民税で35千円を上限に、課税対象の所得から
差し引くことが認められているからである。

国民年金の実状
現在、自営業者らが加入する国民年金では、課税が免除されている低所得者や生活保護
者などの保険料が全額免除されている(法的免除)。また、本人の申請があれば一定の所
得以下の人も保険料が半額となる制度を平成2002年度から導入する。ただし、半額免
除期間をもとに計算する年金の給付額は、保険料を全額納めた場合の3分の2とする。気
の遠くなる話だ。国民年金は91年度から学生にも適用されているため、本人に所得がな
く保険料は親が支払っているが、親の収入に応じ免除される場合もあり、不公平無原則と
なっている(年金保険は親が払うものではない)。さらに、2000年度からは学生が社
会人になってから保険料を追納できるようにして、親の負担を減らす制度も始まった。追
納の期限は「学生特例期間」の月ごとを基準にその後10年間で、期限内に支払えば年金
が満額受け取れる。つまり、所得のない赤ん坊に初めから借金をしょわせる考え方であ
る。その考えの延長線上で出てきた考えが今回の社会保険庁のあの手この手の締め付けプ
ランである。

過去から現在までの動き
社会保険庁は、95年度からは20歳になる学生に自動的に年金手帳を送付し、未納・
未加入者の減少に努めているが、必ずしも保険料納付に結び付いていない。つまり保険と
いう概念は本来的に制度が正しくないと、強制保険としても、徴収は不可能であることは
分かりきった話。特に職のない20代の若者から、借金をしょわせても搾り取ろうなどと
いう制度自身が間違っているのである。
98年の「公的年金加入状況調査」(3年ごとに実施)によると、国民年金の未加入者
は推計993千人(うち昼間学生は113千人)に上った。
前回95年調査(158万人)に比べ、大幅に減ったものの(20歳になる学生に自動
的に年金手帳を送付する等という安易な方法をとれば数字上加入者が増えるのは当たり
前、そのような小手先論で制度を運用するところにも役人の愚かさを感じる。)、58・
1%が未加入の理由を「加入したくない」としている。特に「年金制度の将来が不安だか
ら」との回答が、95年調査の8・1%から15・5%へ倍近く増え、「保険料支払いが
経済的に困難だから」とする回答も15・6%あった。年金事業の根本的見直しが必要で
ある。
所得が低いことなどを理由とする保険料免除制度の免除率は、98年度末に19・9%
と過去最高となっている。ただし学生に所得がなくても、親の所得が一定額以上あると免
除にはならないので、結局、親による本人の代理納付のような形となっている。税金では
ないのであるが、扱いは税金と同じである。

公的年金事業の中の国民年金
国民年金、厚生年金などの公的年金加入者数は、社会保険事業の概況によると、98年
度末で7050万人(前年度比0・2%増)に対し、受給者は延べ3229万人(同2・
8%増)。一人で複数の年金をもらうケースなどがあるため、実際に年金をもらっている
人は2702万人(同2・9%増)だった。支払総額は、前年度末より1兆9千億円
(5・4%)増え、36兆5億円と過去最高を更新した。
生命保険・個人年金加入状況をみると、加入している者の割合は75%であり、保険料
納付状況別にみると、納付者のうち80%が加入している。未納者は66%、免除者は5
2%の加入となっている。一般・学生別にみると、加入している者の割合は、一般が7
9%、学生は44%となっている。
国民年金第1号被保険者2043万人の保険料納付状況をみると、「納付者」が117
3万4千人(74.9%)(うち「完納者」が1037万8千人(66.3%)、「一部納付者」
が135万6千人(8.7%))、「未納者」が172万2千人(11.0%)、「免除者」が2
20万3千人(14.1%)となっている
国民年金を納めなければならない人のうち5人に1人が保険料を納めていないという事
実は、保険のビジネスモデルとしてみても完全に破綻をしている。若者の、農家や商店主
の、入りたくないという直感もある意味で正しい。公的年金加入者が既に7000万人を
超えた国で、国が国民皆保険という耳ざわりの良い言葉を使いながら、やれ未納者だ、免
除者だ、さあ大変だというのは何かおかしい。今の若者、また、成年の者で年金で生活さ
せてもらおうなどと本気で考えている者は皆無に近いはずであり、国民年金に執着しすぎ
るのは官僚の事業を温存させるための保身でしかないという見方も大切である。

増え続ける余剰年金基金
98年度決算における国民年金の収支状況は、国民年金の基礎年金交付金を控除した実
質的な収入が3兆6千億円、実質的な支出が3兆2千億円となっており、収支差引残は5千
億円となっている。また国民年金の積立金は9兆円となっている。積立金は毎年5千億円
強の額で増え続けてもいる。また平均運用利回りは 3.94%である。車の強制保険と同じ
く、国の握った利権業務を民間に放出して始めて、行革は達成できるのである。
本来、保険というのは契約であり、保険は自分で掛けるものであるから強制はしてはな
らない。何しろ保険料を納めていない人のうち3分の2は「払うお金がない」という人達
であり、職業のない学生から毎月13300円を取ろうという発想(その裏には親から取
れという考えがあり、事実、大多数の親が代わりに払っている。)が問題である。支払っ
ている親は直ちに支払い停止するくらいの見識が必要である。これは、損得の話ではな
く、原理原則の話である。
現在のシステムでは、毎月13300円を40年間払い続けると、月6万7千円という
国民年金の支給水準であるが、そんなものは民間の保険会社に入ればもっと有利なプラン
を運用してくれる。無辜の民を愚弄する等しい国民年金は、国が関与すべき事業ではな
い。人が、健康で文化的な生活を送るための最低限の水準を維持するための生活保護でさ
え、満足に受けられないこの国のシステムの実状をみるにつけ、また、破綻をしている特
別養護老人ホームの運営の実体をみるにつけ、国民年金などという甘えの保険を放棄し、
個々の判断に任せた民間のシステムに頼ることが正論である。そして、一律でなく、誰も
が必要に応じて享受すべき「社会福祉」を充実するのが本来の姿である。過度に、社会主
義国家化してしまったこの国のシステムは、根本的な発想の転換が必要だ。前回、ニュー
ジーランドの行革でもふれたように、政府の関与を極力無くしたシステム作りに着手しな
ければならない。
実状を知らない評論家は、アンシャンレジームを前提とした解決法を考えるので、国民
年金ありきの議論から、社会福祉と捉えれば、費用を税金で負担する方法が考えられると
か、逆に税方式にすると、国民年金の対象者である自営業者たちから現在徴収している保
険料相当さえ徴収するのが難しくなる(自営業者たちはサラリーマンに比べて所得を圧縮
しやすい。赤字申告をしている者も多いから、税法式に切り替えると、いままで国民年金
を支払ってきた人も、まったく支払わなくて済むようになってしまう可能性もある)とか
で百家争鳴、方法論の論議に終始をしている。

解決のための根本策
私個人としては、国民年金は廃止すべきと思う。廃止にあたって、今まで払ってきた人
達の支払額に応じて、年金積立金を払い戻すのがいちばん良いと思う。どうしても続ける
というのなら、財政が破綻しない根拠を次代の若者達に示しつつ、「老後にあなたに帰っ
てくる保険料であるという保険契約約款と証書を発行し、国民に持たせる」といったこと
くらいはしなければならない。今のように、保険証券はない。将来どうなるかわからな
い、などという状況下で、この国民年金問題は解決しない。国民あげて、今の制度、運用
には監視の目と、具体的な行動が必要なのである。
ところで、職業のない学生さんのために、あなたはだまって毎月13300円を払い続
けている人ですか。特別の考えをお持ちでなければ、次の機会から支払うことをやめて下
さい。法的に何ら問題ではありません。日本の国民年金制度を根本から変えるために。

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