ハードランデイングかソフトランディングか

ハードランデイングかソフトランディングか
       1年間で国も民間も20兆円を超える負債額。
 
 あと7日で21世紀に突入する。2001年は個人一人ひとりにとっても、波瀾万丈の
年の幕開けだ。20世紀は物質的成長の世紀であった。21世紀は必ずしも物質経済の成
長が国富の尺度とならない、質的再生産期ともいうべき世紀を追求するのではないだろう
か。それとも、依然としてラビットハウスから出勤を繰り返す無辜の民を続けるのであろ
うか。
 少子高齢化の一層の進展とともに、既に破綻しているともいえる国ならびに自治体の財
政は民主主義がアンコントローラブルな事態に至っているために、更に悪化の道をたどっ
ていくという循環が続いている。税収が上がらないところに、公的セクターの利権に基づ
いての前年横並びの予算を組み続けるからである。
 2001年度の予算が閣議決定されたが、2002年4月の銀行のペイオフ導入をはじ
めとした経済の新体系にソフトランディングさせるための予算編成、という位置づけは解
るが、あまり新鮮味のある予算編成とはいいがたい。現下の市場が一層の厳しさを見せ、
一歩先に進んだときには、全てのシナリオは根本から見直さなければならない。そのリス
クが一層高まってきているものと言える。
 経済停滞の最大の理由は需給ギャップの存在だ。箱もの、道路を利用度と無関係に作り
続け、税金の無駄使いを続ける。景気の回復のためのカンフル剤ということで、使いもし
ない高速道路をだらだらと作り続ける。いささか時代錯誤としかいいようがない。そこま
でやったとしても21世紀に起きるであろうゼネコンの倒産は政府の政策が無策であった
ということの象徴的事例となるのではなかろうか。株価の下落とともに銀行が不良債権の
処理引き当てに力を失った結果、そうなることが大きな蓋然性をもつてきた。

 ★民間の負債額
 2000年倒産の特徴は、負債件数規模が膨大ということだ。11月末までに倒産件数
は17,521件に達していることから、98年の年間19,171件を超えて戦後2番
目の記録を塗り替えることになる。また金額では、11月末までに23兆1,555億
2,900万円に達したため、これまで史上最悪だった98年の年間14兆3812億2
400万円を9-10兆円以上も上回わる、年間で24-5兆円にも達する額となる。銀
行が不良債権の処理を年間にこなせるぎりぎりのラインにきているが、来年度も倒産のス
ピードは落ちることがない。不良債権急増と株価急落で、再び、年末年始は、金融不安が
頭をもたげてきても不思議ではない。すでに株価の1万3000円台への下落で、銀行の
自己資本は大きく割れてきており、熊谷組等の4500億円に上る不良債権を法的手続き
に持ち込めないのは、メーンバンク自身の体力の限界ということとモラルハザードをまね
く徳政令発動への負い目があるからである。株価の動きとしては、一旦13,000円台
に叩き込まれた後、夏場にかけて16,000をはさんた持ち合い的上昇トレンドをたど
れるならば、債権の処理は順調に予定どおり行えるかも知れない。だが、上昇トレンドの
根拠があるかというと、どうも積極的要因はないというのが現状だ。そういう意味で来年
は相当危ない年になるのではないだろうか。
 ちなみに、バブルが崩壊し始めた91年から、北海道拓殖銀行、山一証券、長銀、日債
銀が破綻した97年、98年までの倒産の負債総額は約73兆円に達する。その後、99
年と2000年10月までに負債は35兆5000億円発生した。91年からの合計は約
110兆円になる。97年から負債10兆円超が3年続いた後に、負債20兆円時代がや
ってきた。来年はトレンドからいえば、年間30兆円を超えるかも知れない。GDPの
5.8%にも相当する、未体験ゾーンへの突入だ。ゼネコン、金融、流通大手ダイエーな
ど多くの危惧される企業が控えている。個人消費の低迷長期化、公共投資の減少、個人、
会社資産の下落、銀行貸出残高の減少などに加え、パソコンITブームの一巡と対米輸出
頭打ちの兆しなど、一段の環境悪化が懸念されている。
 株価が12,000円台に仮に突入するとしたら、4,500億円の債権放棄を要請し
ている熊谷組のシナリオは完全に崩れることになる。株価が14,000円台を回復した
としても、16,000円以上にならなければ、不良債権の処理は実質的に不可能だ。も
ともと市場経済においては、計画経済のように無理な動きをとらない方が、淘汰されるも
のは淘汰され、あたらしいい芽が生まれていくものであり、私企業の破綻は国の崩壊を意
味しない。むしろ、新しい方向に労働人口を誘導するという点において合理性を持ってい
るものである。

 ★国の負債額
 1990年代に政府が相次いで打ち出した経済対策の事業規模は120兆円を超えたに
もかかわらず景気回復の足取りは重く、将来の成長基盤も残せずにいる。この間に財政事
情は急速に悪化し、国債発行残高は91年度末の172兆円から2001年度末には38
9兆円に拡大する見込みとなった。これは7年分以上の国税収入に相当する。国・地方を
合わせた政府債務残高(借入金を含む)は来年度末時点で666兆円と国内総生産(GD
P)の128.5%に達する見込み。債券市場では需給悪化懸念がくすぶり続けており、
国債発行は綱渡りを迫られそうだ。この間、既述のように民間では倒産の負債総額は11
0兆円に上っている。国が10年間に120兆円つぎ込んでも、この国の民間は110兆
の負債を出している。つまり10年の長いスパンで見ても、この国の経済対策なるもの
は、結果的に我田引水型の実効性のないものであることがわかる。
 来年度予算の大蔵原案は、そうした「大きな政府」の清算を意識したものになったとい
われているが、新規発行国債も28兆円を超えた巨額のものになってしまっている。コメ
ントをするにも恐ろしい額である。政府の意図と理屈は解るが、この予算案から引き出さ
れてくる政策を国民は納得することはなく、夏に向けての政変に一直線に進むことになる
ものと思われる。

参考:
一般会計・財政投融資計画(大蔵原案) 2000年度当初比 
一般会計   82兆6524億円 2.7%減(7.9%減) 
歳入
税収入    50兆7270億円 4.2%増(1.7%増) 
その他収入   3兆6074億円 3.0%減 
国債     28兆3180億円 13.2%減(18.2%減) 
----------------------------------
歳出
一般歳出   48兆6589億円 1.2%増(7.3%減) 
国債費    17兆1705億円 21.8%減  
地方交付税
交付金など  16兆8230億円 12.7%増 
----------------------------------
財政投融資計画32兆5430億円 15.0%減 
(注)カッコ内は2000年度補正後予算比 
 
一般会計歳入歳出概算(単位百万円、%、▲は減) 
区分      2001年度概算額  2000年度当初予算額  伸び率 
(歳 入) 
租税・印紙収入   50,727,000 48,659,000 4.2 
その他収入      3,607,379  3,718,053 ▲3.0 
公債金       28,318,000 32,610,000 ▲13.2 
合   計     82,652,379 84,987,053 ▲2.7 
(歳 出) 
▽社会保障関係費  17,553,134 16,766,593 4.7 
▽文教及び科学振興費 6,613,361  6,528,546 1.3 
▽国債費      17,170,534 21,965,341 ▲21.8 
▽恩給関係費     1,355,058  1,425,594 ▲4.9 
▽地方交付税交付金等16,822,965 14,930,360 12.7 
▽防衛関係費     4,955,020  4,935,801 0.4 
▽公共事業関係費   9,435,202  9,434,003 0.0 
▽経済協力費       954,664    984,153 ▲3.0 
▽中小企業対策費     193,461    194,328 ▲0.4 
▽エネルギー対策費    612,568    635,194 ▲3.6 
▽主要食糧関係費     685,809    685,256 0.1 
▽産投会計繰り入れ    153,716    159,533 ▲3.6 
▽その他の事項経費  5,446,887  5,492,351 ▲0.8 
▽公共事業等予備費    300,000    500,000 ▲40.0 
▽予備費         350,000    350,000 0.0 
▽調整財源         50,000 ― ― 
合   計     82,652,379 84,987,053 ▲2.7

カテゴリー: 経済一般 パーマリンク

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